タナと人間

タナさんのお世話係の人間の日記

初めての動物病院 パート2

キャリーバッグは押入れに入れておくとキャリーバッグを出しただけで猫が逃げる、と聞いて、ずっと部屋の外に出していた。部屋の真ん中にキャリーバッグを置く。タナさんは抱っこは好きだから捕まえても無気力だ。タナさんを捕まえて、キャリーバッグに入れようとする。やはり何か勘づいたか、足でキャリーバッグの入り口を蹴って、入ろうとしない。落ち着くネットに入れてみた。キャリーバッグに入れられた。よし、出発。

徒歩10分と書いていたけど、キャリーバッグを持ったまま10分歩くのはタナさんに負担になるかもしれないと思った。タナさんはキャリーバッグの中から「にゃーにゃー」と鳴いている。「はーい」と返事しながらも、不安だろうなと心配になる。タクシーを捕まえた。そしてタクシーが走り始めて行き先を伝えようとしたとき、あることに気付く。携帯を忘れた。焦る。家から徒歩10分とはいえ、行ったことのないエリアだったから、正確に場所を知っている訳ではない。そんなに前に進んだ訳でもないから、そこで引き返してもらえばよかったけど、初めての動物病院、タナさんは「にゃーにゃー」鳴いてる、早く帰ってあげたい、などなど、要は若干正確に考えられなくなる。「とりあえず真っ直ぐで」と伝える。

どれくらい遠いかは分からないけど、数分のところで、「この辺で」と言った。降りてグルっと見回して分かりやすく動物病院がないか、と見回す。ない。だいたい大通りに面しているかも分からないのだ。「アホか僕は...」と自分を責め、コンビニで「近くに動物病院があるはずなんですけど...」と聞く。店長が出てきてくれた。「あの筋を真っ直ぐいったら、マンションの一階にあったはずです」と。「ご迷惑おかけします、ありがとうございます」と言ったけど、マンションじゃなかったはず。スマホとかで調べてくれた訳ではなく(こんな言い方をしてるけど、全部自分の責任...)、店長のだいたいの記憶なのだ。そのときも「にゃーにゃー」とタナさんは鳴いている。ごめんね、タナさん...。大きなビルも沢山ある通りで、見つけられる自信がなかった。数分歩いて、次は歩行人に声をかけた。「すみません、動物病院この辺に...」「この辺の人間じゃなくてあまり知らなくて...」「にゃーにゃー」「よろしければスマホとかで検索していただけませんか...絶対にこの辺にあるんです...」「わかりました...(スマホでマップを開き「動物病院」を調べる)この通りにありますね、〇〇動物病院が...」「にゃーにゃー」「(あ、名前、多分それだ!スマホに頼りっぱなしだから、動物病院の名前も記憶していない...馬鹿か僕は...)あ、それだと思います!この通りを真っ直ぐで、十字路のところですね?」「そうみたいですね...」「ありがとうございます、本当にご迷惑おかけしました」「にゃーにゃー」「いえいえ、とんでもないです...」

やった!見つかったぞ!タナさんごめんね...ここまで家を出てから15分くらいしか経っていないはずだけど、それでも初めてのタナさんとの外出で、ものすごく不安だった。「引き返せばよかった...」と自分の判断力を責める。タナさんはにゃーにゃー言ってる。交番の前を通る。交番の前を通るとき、何も悪いことをしていないのに、なんか見られている気分になる。...すると、あった!看板を見つけた。そして犬さんを連れた人たちが数人いた。ここだ!ポーカーフェイスだったが、すごく安心した。もうちょっとだね、タナさん、ごめんね。

つづく

今現在のタナさん